ご安全に!
日本一わかりやすいって!?
人的資本経営って他にもいっぱい解説されてますが、大丈夫ですか?
愛ある人事課
ひかるさん
愛ある人事課
愛課長
ご安全に!
実はわたし、日本一むずかしことが苦手で、そんな私がまとめれば、日本一わかりやすいかと…
早速始めてみましょう💦
私のプロフィールはこちらです。
目次
人的資本経営を理解する一番カンタンな図
人的資本経営を一番カンタンな図で表すと下記のようになります。
社会問題を解決し、サスティナブルな社会を実現するために、人へ投資し、教育や働きやすい環境整備や処遇をすることによりイノベーションにつなげ、社会も企業も個人も成長する好循環を起こすことが人的資本経営の本質になります。
なぜ今、人的資本経営が重視されているのか見ていきましょう。
人的資本経営が重視される背景と情報開示の必要性
IoTやビッグデータ、AIなどの技術の進化による第四次産業革命により、産業構造に大きな変化が起こっています。
また、物質的に満たされた社会においては、人々が望むものは物質的なものではなく、精神的に満たされるサービスなど無形なものに変化しています。
それにあわせ企業の価値も、これまでの設備や建物、土地などの有形資産から新たなビジネスモデルや知的資本、人的資本などの無形資産に移行しています。(下図)
これまでは企業の利益を圧迫するコストであった「人」が、その発想やスキル(特にIT)により社会を変革し、企業の利益を創出する源泉に変化しています。
これは、スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグなど個人のアイデアから発展したGAFAなどをみても明らかです。(もともと一人の頭で考えたことから始まっていると考えると改めてすごい!)
このことから、多くの投資家が、企業の「人」に注目し、人材戦略に関する経営者からの説明を期待しています。
また、企業としても、経営者、投資家、そして従業員をはじめとするステークホルダー間の相互理解を深めるため、「人的資本の可視化」が不可欠となっています。
人的資本経営の理解には人的資本経営可視化指針と人材版伊藤レポート2.0が有効
人的資本経営やその情報開示について理解するには以下の2つの資料を読むと理解が深まります。
愛ある人事課
愛課長
理解が深まるのですが、
人材版伊藤レポート2.0は81ページ、
人的資本経営可視化指針は51ページ
もあるので、読むのが大変💦
今回は人材版伊藤レポート2.0を簡単にまとめていきたいと思います。
人材版伊藤レポートの成り立ち
このレポートは下記に記載している研究会の座長である伊藤邦雄さん(一橋大学CFO教育研究センター長)がまとめられました。
この研究会の委員構成は男11名 女7名と男女比にも配慮されているように感じます。
人材版伊藤レポートの成り立ち
まずは成り立ちです。
- STEP
2010年代
日本においてガバナンス改革の機運が高まる。
- STEP
2020年1月
経済産業省にて”持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会”が組成される。
(コロナの感染が広がりだしたのもこの頃) - STEP
2020年9月
上記研究会の成果として「人材版伊藤レポート」公表
- STEP
2021年6月
コーポレートガバナンス・コード改定
人的資本への投資と開示(下記)- 管理職の多様性(女性・外国人・中途採用)の考え方と測定可能な目標設定
- 人材育成方針と社内環境整備方針の実施と開示
- 人的資本への投資と経営戦略・経営課題との整合性
米国証券取引委員会(SEC)にて”社員や取締役の多様性”の開示
- STEP
2021年7月
”人的資本経営の実現に向けた検討会”の立ち上げ
- STEP
2022年5月
「人材版伊藤レポート2.0」公表
2020年1月の研究会の組成とコロナの感染が始まった時期が重なるのが不思議ですね。
愛ある人事課
ひかるさん
愛ある人事課
愛課長
そうなんです!
コロナ禍で人々の生活や働き方の価値観が大きく変わったことが、人的資本経営の考え方とマッチしていて、予見していたかのようですね。
人材版伊藤レポート2.0の要約図
人材版伊藤レポート2.0をものすごく簡単に要約したのが下の図です。
一番最初に図で見ていただいた通り、人的資本経営は「よりよい社会の実現のために人に投資をしましょう」というのが本質になります。
企業には社会を豊かにするために目指すべきビジネスモデルや経営戦略があります。
その経営戦略と人材戦略を結びつけることによって人的資本経営を推進するためのポイントがまとめられているのがこのレポートになります。レポートの中では「アイデアの引き出し」という表現がされています。
人的資本経営を進める上でのポイントと工夫の一覧(PDF付き)
人材版伊藤レポート2.0にかかれている人的資本経営を進める上でのアイデアの引き出しをまとめてみました。
愛ある人事課
愛課長
すこしボリュームがありますが、見ているとやるべきことがみえてきます。
意外とできているなとおもうこともあるかと思います。
1.経営戦略と人材戦略を連動させるための取組
(1)CHROの設置
- 工夫1:CHROが担う役割・責任の定義、従来の人事部長との差異の明確化
- 工夫2:計画的な候補者育成(候補者への事業経験の付与)
- 工夫3:経営陣を中心とした意識変革、CHROへの支援
(2)全社的経営課題の抽出
- 工夫1:CHROから経営陣への能動的な問いかけ
- 工夫2:課題の優先順位付け及び解決に要する時間軸の明確化
(3)KPIの設定、背景・理由の説明
- 工夫1:他社動向・トレンドにとらわれないKPI設定
- 工夫2:定性指標の可能な範囲での定量化
- 工夫3:KPI間の優先順位の明確化・コミットメント
(4)人事と事業の両部門の役割分担の検証、人事部門のケイパビリティ向上
- 工夫1:事業担当人事社員(HRBP)の設置
- 工夫2:事業・人事両部門間の人材交流
- 工夫3:企業価値向上に向けた人事部門体制の検討
(5)サクセッションプランの具体的プログラム化
ア 20・30代からの経営人材選抜、グローバル水準のリーダーシップ開発
- 工夫1:候補者を見極める基準の明確化
- 工夫2:各候補者の課題に応じたミッションの設定と伝達
- 工夫3:経営人材候補に課すべき責任の高度化(特に財務・人事)
イ 候補者リストには経営者の経験を持つ者を含める
- 工夫1:子会社トップポジションの配置方針の見直し
- 工夫2:ジョイントベンチャー、コーポレートベンチャーキャピタル投資先等への経営人材候補の配置
- 工夫3:アルムナイ(自社を退職した人)との持続的な関係構築
(6)指名委員会委員長への社外取締役の登用
- 工夫1:指名委員会委員長の責任の明確化
- 工夫2:経営人材候補と指名委員の接点の増加
(7)役員報酬への人材に関するKPIの反映
- 工夫1:企業価値における人的資本と他の無形資産の重要性の検討
- 工夫2:KPIの達成状況と報酬変動幅の関係(インセンティブカーブ)の開示
- 工夫3:運用開始後の柔軟な制度改定(報酬が変動し過ぎた場合等)
2.「As is – To be ギャップ」の定量把握のための取組
(1)人事情報基盤の整備
- 工夫1:KPIに直接関連する情報の整備を優先
- 工夫2:情報収集の対象とする社員の範囲も段階的に拡大
(2)動的な人材ポートフォリオ計画を踏まえた目標や達成までの期間の設定
- 工夫1:人材ポートフォリオのギャップについての可能な限り具体的な達成までの道筋の定義
- 工夫2:KPI、目標、達成期間の柔軟な見直し
(3)定量把握する項目の一覧化
- 工夫1:経営戦略の実現を左右する重要なKPIに絞って、その「As is -To be ギャップ」を1枚に集約
- 工夫2:「As is – To be ギャップ」の改善に向けた課題の抽出
3.企業文化への定着のための取組
(1)企業理念、企業の存在意義、企業文化の定義
- 工夫1:企業理念、企業の存在意義、企業文化の定義に関する経営陣・取締役会での議論、CEO・CHROによる議論の主導
- 工夫2:CEO・CHROによる投資家への発信
(2)社員の具体的な行動や姿勢への紐付け
- 工夫1:企業文化が職場で重視されているかを定点観測
- 工夫2:経営陣・社員の人事制度と企業文化の連動
- 工夫3:企業文化を体現した優れた行動事例の集約
(3)CEO・CHROと社員の対話の場の設定
- 工夫1:経営陣による企業文化への定着に対するコミットメント
4.動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用
(1)将来の事業構想を踏まえた中期的な人材ポートフォリオのギャップ分析
- 工夫1:事業を取り巻く環境変化の度合いに応じたポートフォリオ策定
- 工夫2:ポートフォリオ策定における事業部門と人事部門の責任の明確化
- 工夫3:経営戦略の選択肢を増やす人材ポートフォリオの構築
(2)ギャップを踏まえた、平時からの人材の再配置、外部からの獲得
- 工夫1:不足する人材の質に応じた確保戦略の検討
- 工夫2:人材獲得競争に打ち勝つための処遇や評価手法の再検討
- 工夫3:人材獲得に資する多様な雇用形態の活用
- 工夫4:アルムナイ(自社を退職した人)との持続的な関係構築
(3)学生の採用・選考戦略の開示
- 工夫1:学生のキャリア選択権の明示
- 工夫2:通年採用の導入、多様な入社月の設定
- 工夫3:学生への人的資本経営方針の発信
(4)博士人材等の専門人材の積極的な採用
- 工夫1:研究開発部門にとらわれない博士人材の登用
- 工夫2:研究内容・自社事業に基づく、入念なミッションのすり合わせ
- 工夫3:高度な専門性を踏まえた魅力的な報酬テーブルの設定
- 工夫4:産学連携による博士人材の活用
5.知・経験のダイバーシティ&インクルージョンのための取組
(1)キャリア採用や外国人の比率・定着・能力発揮のモニタリング
- 工夫1:目標とする比率とその理由の明確化、取締役会での議論
- 工夫2:多様性を発揮するための属性ごとの課題の特定と克服
- 工夫3:定着・能力発揮についての目標化、特に重要ポジションにおける定着状況の社外取締役による評価
- 工夫4:経営陣に関するダイバーシティ&インクルージョンの目標の設定
- 工夫5:定着・能力発揮の状況に関する、対象となる人材と所属部門双方に対するフォローアップ
(2)課長やマネージャーによるマネジメント方針の共有
- 工夫1:一時的な状況でマネージャーを評価せず、マネジメントの改善を高く評価する運用
- 工夫2:ダイバーシティマネジメント上の工夫の共有・勉強会を奨励
- 工夫3:特に苦労している課長・マネージャーには人事部門と所属部門が協働で支援
6.リスキル・学び直しのための取組
(1)組織として不足しているスキル・専門性の特定
- 工夫1:自社の競争力向上につながるスキル・専門性の幅広い分析
- 工夫2:不足する質と量の簡易・迅速な定量化
- 工夫3:スキル・専門性ギャップの社内外への発信・対話
(2)社内外からのキーパーソンの登用、当該キーパーソンによる社内でのスキル伝播
- 工夫1:リスキルに関する責任の明確化、幹部との責任の共有
- 工夫2:キーパーソンへの過度な依存を防ぐ、後継者の計画的な育成
- 工夫3:現職に関わらず社員がリスキルに挑戦できる機会の提供
(3)リスキルと処遇や報酬の連動
- 工夫1:リスキル後に期待するポジションやミッションの伝達
- 工夫2:市場価値を意識した、リスキル後に期待される報酬水準の明確化
- 工夫3:社員が互いに学び合う場の設置による、リスキルへの動機付け
(4)社外での学習機会の戦略的提供(サバティカル休暇、留学等)
- 工夫1:組織で不足しているスキル・専門性を踏まえた、社外での学習機会の整備
- 工夫2:サバティカル休暇や留学期間中の、会社への知識・経験の還元
- 工夫3:サバティカル休暇や留学中の穴埋めを行う人材の確保
(5)社内起業・出向起業等の支援
- 工夫1:手挙げの文化の醸成、手を挙げた人材への機会の提供
- 工夫2:事業の成功だけではなく経験に価値を見出し、幅広い起業テーマを許容
- 工夫3:帰任後のスキル伝播も見据えたミッションの伝達
7.社員エンゲージメントを高めるための取組
(1)社員のエンゲージメントレベルの把握
- 工夫1:目的に応じたエンゲージメントレベルの把握
- 工夫2:エンゲージメント把握後のコミュニケーション担当の設置
(2)エンゲージメントレベルに応じたストレッチアサインメント
- 工夫1:平時からの社内人材の状態の把握
- 工夫2:エンゲージメントレベルを踏まえた伴走者の任命
(3)社内のできるだけ広いポジションの公募制化
- 工夫1:各ポジションに求められる要件の明確な定義
- 工夫2:平時からの各部門の職務内容や魅力の発信
- 工夫3:期待する役割や、希望を叶えられなかった理由等についての、選考後の丁寧なコミュニケーション
- 工夫4:着任後のパフォーマンスに応じ、再異動も含めた柔軟な対応
(4)副業・兼業等の多様な働き方の推進
- 工夫1:社内・グループ内での副業・兼業を試行
- 工夫2:副業・兼業を認める範囲の見直し
- 工夫3:副業・兼業とリスキル・学び直しの連動
(5)健康経営への投資と Well-being の視点の取り込み
- 工夫1:多様な健康課題に対応した施策の提供
- 工夫2:ステークホルダーへの情報発信
- 工夫3:組織体制の構築
- 工夫4:Well-being の視点の取り込み
8.時間や場所にとらわれない働き方を進めるための取組
(1)リモートワークを円滑化するための、業務のデジタル化の推進
- 工夫1:コミュニケーションツールのデジタル化
- 工夫2:社内決裁の簡素化・デジタル化
- 工夫3:サテライトオフィス等の整備
- 工夫4:リモート環境を前提としたマネジメントの見直し
(2)リアルワークの意義の再定義と、リモートワークとの組み合わせ
- 工夫1:リアルワークで行う必然性のある職務の特定
- 工夫2:部門を超えたコミュニケーション機会の確保
上記のリストをPDFにしてみました。
人材版伊藤レポート公表の狙いは、企業の付加価値につながる変革やイノベーション。
レポートは最終的に企業の付加価値につながる変革やイノベーションが起こることを狙いとしています。
人的資本経営の取り組みが推進されることで…
日本社会で働く個人の能力が十二分に発揮される。
画一的な雇用システムから個人が解放される。
社会全体として、個人のキャリアがますます多様化していく。
リスキルや学び直しの価値が社会全体としても評価されていく。
日本社会がより一層、キャリアや人生設計の複線化が当たり前になる。
多様な人材がそれぞれの持ち場で活躍でき、失敗してもまたやり直せる社会へ
と転換していく。
結果として、企業の付加価値につながる変革やイノベーションが起こっていく。
レポートを読んでいると、変化していかないと日本の企業の発展は望めないという危機感がにじむ反面、日本の企業や働く人への可能性や期待という温かい励ましを感じました。
人事総務部門のみなさん、できることから少しずつ継続して取り組んで行きましょう!
人材版伊藤レポート2.0の内容をできるだけわかりやすくまとめてみました。
最後に言葉でまとめてみます。
人材版伊藤レポートは、人的資本経営に取り組むヒント集。
人的資本経営により、人の能力が発揮され、イノベーションが起こり、社会課題が解決され、社会・企業・個人が成長することが狙い。
人的資本経営を進めていくのは、人事総務部門としてもやることが多く大変かと思います。
ただ、レポートの中でも下記様にかかれています。
人材に関する取組は、息の長いものとなる。その意味でも、最初から「100 点」の結果を生むことはない。各企業の経営理念の下、経営戦略の実現に向けた課題を特定し、優先順位を付け、その効果を見極めて改善を重ねていく絶え間ないサイクルが求められる。これにより具現化した、人的資本経営の実践の内容こそが、投資家に伝えていくべき本質的なメッセージ
人材版伊藤レポート2.0
上の取り組みのヒントや工夫をみれば、意外と既にできていることや、できそうなことが見えてきます。少しでも取り組みが進めば、その分、みんなが働きやすくなりますね。
このレポートは、これからの人事パーソンがもつべき考え方の指標となるものです。ページ数は多いですが、意外と読みやすいので、このブログをきっかけに一度目を通されるのも良いかと思います。
愛ある人事課
愛課長
CHROの設置も必要と言われています。ますます人事パーソンの活躍の場が増えてきますね!
次は情報開示についてまとめたいと思います。
それでは、ご安全に!
リスキリングなどの言葉の解説はこちらの記事もご参考にしてください。