愛ある人事課
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ご安全に!
2023年5月16日の日本経済新聞で3歳まで育児休業が努力義務になる記事が掲載されていました。在宅勤務の考え方を整理したいと思います。
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目次
記事の内容
2023年5月16日の日本経済新聞のなんと!1面に掲載されています。
法改正の内容
- 2024年中に育児・介護休業法や関係省令の改正
- 3歳までの子どものいる社員が在宅勤務できる仕組み導入を努力義務に。
- テレワークが難しい企業はフレックスタイム制度の活用などを求める。
- 3歳までの残業免除権も就業前までに延ばす。
テレワーク制度のある就業者比率(国土交通省調査)
2019年度 19.6%
2022年度 37.6%
認められていない人のうち67%は実施したい。
テレワークで働く人の割合は企業規模が小さいほど少ない。(国土交通省調査)
1000人以上 36.7%
100~299人 22.7%
20~99人 17.5%
課題
中小企業にとっては、関連設備の負担が増える。
従業員が少ない中小企業は生産性低下の懸念。
対面を避けられない業種(サービス業、介護、保育、医療など)では対応が難しい。
日本での在宅勤務の歩み
愛ある人事課
愛課長
今回の記事にある通り、企業として在宅勤務のありかたを整理し、対応していく必要があります。まずは日本での在宅勤務のこれまでの歩みをみていきましょう。
コロナの感染拡大により企業での在宅勤務導入が一気に進みました。
さかのぼると2007年に政府は「テレワーク人口倍増アクションプラン」とし、少子高齢化など労働人口の減少の対策として、テレワーク(在宅勤務含む)を推進しました。下記の引用を参照ください。
少子化や高齢化が進展し労働力人口の減少が見込まれる中、テレワークは、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)や個々人の置かれた状況に応じた多様で柔軟な働き方を可能とし、
①個々人の働く意欲、子どもを持ちたいという希望等に応えつつ、その能力を遺憾なく発揮し活躍できる社会の実現
https://www.jinji.go.jp/kenkyukai/telework/kanbousankou0202.pdf
②次代を担う子供を家族のより深いふれあいの中で育む環境の実現
③今後の人口構造の急激な変化の影響を克服し、企業活力や社会経済活力の維持・向上、グローバル化の中での国際競争力の確保
④場所にとらわれない就労や起業を通じた地域活性化
⑤交通代替によるCO2削減等環境負荷の軽減などに資するもの。
テレワークの普及促進によって、今後の人口構成の急激な変化に対応できる、次世代の経済社会基盤や家庭、地域社会基盤の構築等に寄与。
また、そのアクションプランから少しさかのぼった2004年に厚生労働省から今後の来るべき在宅勤務時代にそなえ在宅勤務での労働時間管理などに関して、「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を公表しています。
しかしながら、企業にとっても、働くひとにとっても自分ごととして捉えることが少なかったのか、導入する企業は20%に満たない状況が続いていました。
それがコロナにより状況が激変します。
結果として、「少子高齢化による労働力不足を解消するため」という将来の長期的な課題解決より、「感染から命(社員)をまもる。出社できない状況でも事業継続する。」という動機が在宅勤務の導入を推し進めたといえます。
在宅勤務が広がり働く人の意識は大きく変化
先に見ていただいた通り、コロナの感染拡大により在宅勤務を導入する企業が増えました。
最近は出社割合を高めている企業も増えていますが、もはや在宅勤務をまったくなくすことは難しくなったのではないでしょうか。
それは、在宅勤務をすることで今まで気づかなかったことがわかり、働くひとの意識が大きく転換したからです。
例えば
- ラッシュ時の通勤がなければ、こんなに体も気持ちも楽なのか。(特に都心部)
- 通勤時間がないと自分の時間がすごく増える。
- 外にでなければお金を使わずに済む。
- 集中して仕事ができる。
- チャットや電話、WEB会議があれば意外とコミュニケーションに困らない。
- 在宅勤務が普及したことでペーパーレス化などの業務改善が進む。
- いままでなぜあんなに一生懸命出社していたのか意味がわからない。 など
一方、在宅勤務をすることで下記のようなデメリットもわかってきました。
- ちょっとした雑談などのコミュニケーションがしづらい。
- 体を動かすことが少なくなる。
- 自宅に設備を設置するのに費用がかかる。
- 同じ部署の仕事の動きが見えづらくなる。
- 出社し、来客対応や電話対応している人との負荷の差がでる。
- 管理職の中にはサボっているのではと不安に思う人もいる。
これらのメリットもデメリットも踏まえたうえで、育児や介護、治療、障害など制約のある働き方をしなければならない人にとって、継続的かつ効率的に働く手段として、在宅勤務がなくてはならないものになった(みんなが気づき、実感した)ということです。
意識の変化をとぎれさせず、働き方の変革をすすめ、今後の少子高齢化の労働人口減少の問題解決につなげていくことが、今回発表された法改正の狙いと考えられます。
多様な働き方を推進するために、企業はできることから柔軟に対応。
先の項目の様に、在宅勤務の必要性や目的を明確にできたとしても、在宅勤務の導入が難しい企業もあるかと思います。
特に、対面での対応がもとめられる業種もですが、製造業などで工場に勤務しないといけない業種も実際に在宅勤務の対応をとることは難しいと思います。
そのような業種であっても以下の3つの観点で
①働く場所、②時間、③心理的な柔軟性を確保し、社員の働きやすい環境をつくることができます。
場所の柔軟性
・在宅勤務
・サテライトオフィス
などの対応になります。
また、転勤をしなくてよいという勤務地を固定するだけでなく、配偶者の転勤にあわせて一緒に移動できる制度も場所の柔軟性を実現できます。
時間の柔軟性
制約のある働き方をしなければならない人が、在宅勤務をできないときに、時間の融通がきくようにするのがこちらの対応になります。
- 時差出勤
- フレックスタイム
- 時間単位有給休暇
- 短時間勤務
- ノー残業デー
- シフトの固定(シフトが変わることで家族の生活パターンが変化するのを緩和)
これらの対応は、勤怠システムなどの対応で費用が発生するかもしれませんが、機器などの導入費用は少ないでしょう。
しかし、企業によっては製造やお客様対応の都合で勤務時間は変えられない、そもそもの工数が減ること自体が厳しいということもあるかと思います。
それでもいままでの発想や慣習をゼロベースで考え直せばできることはあります。
なぜなら、先のグラフで見ていただいた通り、コロナ感染前まで日本では在宅勤務ネガティブどころか見向きもしていなかったのが、これほど広まったのですから。
心理的な柔軟性
先にみた場所や時間の柔軟性を確保するには、システムや機器の導入に費用がかかり、工数が減るために導入に踏み切りにくい会社もあるかと思います。
この心理的な柔軟性は、育児や介護など制約のある働き方をしなければならない人の気持ちをどれだけ職場のなかで共有できるかという観点です。
「何時までに帰らないといけないのにっ!」
「どうしてもこの日に休まないといけない!」
という焦りや言い出しづらい気持ちを会社・職場として理解し、少しでも緩和することが心理的な柔軟性になります。
下記の様なことがあげられます。
- 休みのとりやすさ(休暇申請のしやすさ・上司に嫌な顔をされない)
- 時短で帰るときの後ろめたさの解消
- アウトプットや業務の効率などを評価(長く働いたことを基準に評価しない)
- 個人的なことも、仕事のことも相談しやすい雰囲気
- 個人の育児や介護、治療などの制約などをお互いに把握(プライバシーに配慮)
- メンバーの仕事が滞らない様な上司のサポート(上司がずっと会議で席にいないのは🙅♂️)
- お互いにサポートしあえる環境(お互い様の精神)
- 在宅勤務と出社勤務の不公平感の解消
(例えば出社している人のために食堂の利用料金を値下げ、ドリンクやおやつが食べ放題など出社しているから得られる福利厚生の充実など)
会社に出社するとこうしたちょっとしたことで働きづらさを感じ、在宅勤務を希望する人が多いのかもしれません。
これらの項目を見ていただくとわかりますが、ほとんどお金をかけずにできることができます。
こういったことが職場で実現できるといまよりももっと働きやすくなると思いませんか。
今後の在宅勤務のありかた。目的を明確にすることが必要。
愛ある人事課
愛課長
私も製造業で働いていますので、どうしても在宅勤務できない会社の悩みがわかります💦
それでも、「ある部門ができないから、全社的に在宅勤務はなくしていく」というのは思考が停止だと思います。
在宅勤務を導入する目的としてざっとあげても以下のようなものがあります。
- 育児や介護、治療や障害など制約のある社員を働きやすい環境へ
- 制約のない社員にとっても、プライベートな時間が確保でき、スキルアップや副業など自律したキャリアの推進
- 通勤による身体や精神の疲労を軽減
- コミュニケーションが必要な業務と集中して行う業務を出社と在宅勤務で使い分け業務効率アップ
- 紙を使用する業務をペーパーレス化するなど改善を考えるきっかけ
- 出社する人が少なくなると事務所スペースを最適化し、賃借料などの経費削減。
- 通勤費の削減
- リモート勤務が定着すれば、転勤の概念が変わり、転勤が減る。社宅や引っ越し費用の削減と個人の希望の両方にメリット
- 採用競争力、優秀な人財の確保、離職防止
- エンゲージメントの向上
- 災害時、大雨、大雪、感染症の拡大などの際のBCP対策
- 通勤によるCO2排出を削減し、環境負荷低減
人事総務部門としては検討しない理由はありません。
先にあげた在宅勤務できる人、できない人の不公平感解消もふくめていろいろな可能性を検討し、社員一人ひとりが働きやすく、仕事の効率もあがる方法を考えていきましょう。
それではご安全に!